AI情報メディア「AIテックベース」が、WordPress+レンタルサーバーから静的サイト(Astro+microCMS+Cloudflare® Pages)へ運用方法を変更した実体験。管理画面・プラグイン・DBが無いことで、表示が速く、攻撃されにくく、壊れにくくなった理由を非エンジニア目線で解説します。

シリーズ①なぜWordPressではなく、静的サイトを採用したのか。得た速さ・安全・壊れにくさ

結論:速度・セキュリティ・運用の安定の3点で、弊社の考えでは、静的サイトはWordPressに勝ったと考えます。

私たちが運営するAI情報メディア「AIテックベース」は、WordPressではなく静的サイトの構成を採用したことで、表示が速くなり、攻撃されるリスクが減り、サイトが壊れにくくなりました。静的サイトには、管理画面・プラグイン・データベースが、公開しているサイトの側に存在しないからです。これらはWordPressの便利さの源であると同時に、遅さや弱点、故障の主な原因でもありました。

この記事では、非エンジニアの代表者が実際に構築して感じたメリットと、正直なデメリット、そして静的サイトでも気をつけるべき点をまとめます。

1. どのような構成にしたのか

もともとAIテックベースは、さくらのレンタルサーバー上でWordPressでの構築を検討していました。しかし、次の構成に置き換えました。

  • 表示の部分:Astro(出来上がりは静的なHTML)
  • 記事の管理:microCMS(日本製のヘッドレスCMS)
  • 公開する場所:Cloudflare Pages
  • 問い合わせフォーム:さくらのレンタルサーバー上のPHP(メールを送るだけで、個人情報はどこにも保存しない)

ポイントは、記事を書く画面(microCMS)と、読者が見る画面(静的なHTML)が分かれていることです。WordPressのように「1つの仕組みが全部を兼ねる」構成をやめました。

WordPressは読者のアクセスのたびにサーバーがデータベースから記事を読んでページを組み立てるのに対し、静的サイトは記事の公開時にあらかじめ完成したページを作って配信するため、公開側に管理画面やデータベースがないことを比べた図

2. メリット1:速度

静的サイトは、完成したページをそのまま配るため速くなります。WordPressは、アクセスのたびにサーバーでPHPを動かし、データベースに記事を問い合わせ、ページを組み立てて返します。静的サイトは、あらかじめ完成したHTMLのファイルを渡すだけです。料理にたとえるなら、注文のたびに一から調理するのがWordPress、作り置きをすぐ出すのが静的サイトです。

さらにCloudflare Pagesは世界各地の拠点から配信するため、読者に近い場所から届き、待ち時間が短くなります。なお、WordPressでも、ページを一時保存する仕組み(キャッシュ)を使えば速くできます。ただ、その設定と管理にも手間がかかります。

3. メリット2:セキュリティ

静的サイトは、攻撃される入口が大きく減ります。WordPressが狙われやすいのは、次の3つの入口があるためです。

  • 管理画面(ログインページ):パスワードを総当たりで破ろうとする攻撃の的になる
  • プラグイン:便利な反面、更新を怠ると弱点が放置されやすい
  • データベース:不正なデータを送り込む攻撃(SQLインジェクションなど)の対象になる

静的サイトの公開側には、この3つがいずれもありません。記事を編集するmicroCMSの管理画面は別のサービス上にあり、公開中のサイトとは切り離されています。「侵入しようにも、そもそもドアが付いていない」状態に近いと言えます。

4. メリット3:運用の安定

WordPressの不調の多くは、データベースやプラグイン同士の相性に由来します。プラグインを更新したら画面が真っ白になった、データベースが壊れて記事が表示されなくなった、といったトラブルです。静的サイトで公開しているのは、ただのHTMLのファイルなので、こうした連鎖的な故障が起きにくいのです。

さらに、microCMSで記事を公開すると、通知(Webhook)が自動でCloudflareに伝わり、サイトが作り直されて1分ほどで反映されます。仮に作り直しに失敗しても、直前に成功した版が表示され続けるため、サイトが止まることはありません。「公開ボタンを押すだけ」で運用が回るようになりました。

観点

WordPress

静的サイト(Astro+microCMS)

表示の速さ

毎回その場で作るため遅くなりやすい

完成したページを配るため速い

攻撃される入口

管理画面・プラグイン・データベースと多い

公開側にはほぼない

壊れやすさ

更新やデータベースの障害で不調が起きやすい

データベースがなく壊れにくい

初期構築の手間

導入が早く、始めやすい

最初の準備に手間がかかる

5. 静的サイトでも守るべきところ

「静的サイトなら安全」と言い切るのは正確ではありません。公開側の入口が減るかわりに、守るべき場所が別のところに移ります。実際に運用して、次の点を意識するようになりました。

  • CMSのアカウント:記事を書き換えられる入口なので、強いパスワードと二段階認証を設定し、使う人の権限を絞る
  • GitHubとCloudflareのアカウント:サイトの中身や公開の設定を変えられる入口。同じく二段階認証を必須にする
  • APIキーなどの秘密の情報:コードに書かず、公開サービスの「環境変数」など安全な場所で管理する
  • ビルドに使う部品の更新:静的サイトも、作るときには多くの部品(パッケージ)を使う。部品に弱点が見つかれば更新が必要
  • 問い合わせフォーム:サーバー側で動く数少ない部分。迷惑な送信の対策や、受け付けるデータのチェックを入れておく

つまり、静的サイトは「守る範囲を小さく、はっきりさせられる」構成であって、「何もしなくてよい」構成ではありません。

6. WordPressにも変わらない強みがある

WordPressには、今も多くの現場で支持され続ける理由があります。

  • テーマの豊富さ:デザインの専門知識がなくても、見栄えのするサイトをすばやく立ち上げられる
  • プラグインによる拡張性:SEO、フォーム、予約、EC機能などを、コードを書かずに追加できる
  • 2つの選び方:自分でサーバーを用意して自由に作り込むWordPress.orgと、手軽に始められるWordPress.comがある
  • 対策も確立している:二段階認証を入れる、プラグインを最新に保ち使わないものは削除する、といった基本の対策で、リスクを大きく下げられる

制作会社が関わる会社のサイト、複数人で記事を書くメディア、ECや予約が必要なサービスのサイトなど、WordPressが今も最適な場面は多くあります。そのうえで私たちは、更新が多く、記事が中心のメディアを少人数で運用するという自社の事情から、静的サイトを選びました。なお、今回の構築は、AIに意図を伝えながら一緒に作る「バイブコーディング」で行いました。

7. 正直なデメリット:初期構築の手間

静的サイトは、最初の構築に手間がかかります。WordPressのように「インストールすれば全部そろう」わけではなく、表示・記事の管理・公開・フォームを、それぞれ組み合わせて作る必要があるからです。

私たちも移行の途中で、いくつもの壁にぶつかりました。さくらのレンタルサーバー(スタンダード)には当初FTPで自動アップロードしようとしましたが、ログインは通るのに、ファイルの転送だけが失敗し続けました。原因は、さくらの「国外IPアドレスフィルタ」でした。海外からのFTPやSSHなどの接続を制限する安全機能で、自動化のツールは海外のサーバーで動くため、止められていたのです。最終的に公開先をCloudflare Pagesに切り替えたことで、さくらへ海外から接続する必要がなくなり、フィルタを有効にしたまま自動で運用できるようになりました。

ここでの学びは、非エンジニアにとって特に重要でした。「原因らしきものを片っ端から試す」のではなく、先に環境の仕様を確かめ、エラーの意味を調べて原因を1つに特定してから直すことです。初期の手間は確かにありますが、一度組み上げてしまえば、速さ・安全・安定は日々の運用でずっと効いてきます。

8. どちらを選ぶべきか、移行を迷っている会社へ

WordPressが向いている会社

静的サイトが向いている会社

複数の担当者が同時に記事を書く

更新は多いが、記事の追加が中心

予約やECなど、サーバー側の処理が必要

担当者が少なく、管理画面の保守に時間を割けない

テーマの入れ替えでデザインを頻繁に変えたい

表示の速さやセキュリティを重視したい

「今すぐ移行すべきか」と聞かれたら、まず今のサイトで実際に困っているかを確認することをおすすめします。表示の速さやセキュリティに不満がなく、更新も回っているなら、無理に変える必要はありません。プラグインの更新に追われている、表示の遅さがアクセス解析の数字に表れている、担当者が変わるたびに引き継ぎで苦労している、といった具体的な困りごとがあるなら、検討する価値があります。

移行するなら、繁忙期を避け、本番のサイトを触る前に確認用の環境で一通り動かしてから切り替えましょう。URLが変わる場合は、古いURLから新しいURLへの転送も忘れずに設定します。何より大切なのは、移行そのものを目的にしないことです。私たちの目的は「更新の多いメディアを、少人数でも安定して回せる状態にする」ことで、静的サイトはその手段のひとつに過ぎません。

9. さくらインターネットについて

今回は公開先をCloudflare Pagesにしましたが、問い合わせフォームは今もさくらインターネットのサーバーで動いています。皆様に知っていただきたいさくらインターネットの良さは、国内のインフラ企業としての信頼です。政府の共通のクラウド基盤「ガバメントクラウド」では、それまで海外の大手4社のサービスしか選ばれていませんでしたが、さくらのクラウドは2023年11月に国産で唯一、条件付きで選ばれ、2026年3月には305項目の技術要件をすべて満たして、正式に採択されました。

AI向けのGPUの提供にも力を入れており、学生時代に起業した田中社長のもと、スタートアップなど挑戦する人を支援する取り組みも続けています。料金が円建てで、為替によって毎月の請求額が変わらない国産の安心感と、日本の技術や人に投資する姿勢は、大きな魅力だと感じています。構築環境は、こうしたメリットとデメリットを比べて選ぶことが大切だと考えます。

10. まとめ

  • 速度:完成したページをそのまま配るため、WordPressより表示が速い
  • セキュリティ:公開側に管理画面・プラグイン・データベースがなく、攻撃される入口が大きく減る
  • 運用の安定:データベースに頼らないため壊れにくく、自動の再構築で運用が楽になる
  • 守るべきところは移る:CMS・GitHub・公開サービスのアカウント、秘密の情報、部品の更新、フォームは引き続き守る
  • デメリット:初期構築に手間がかかる。ただし一度作れば効果は長く続く

CloudflareおよびCloudflare Pagesなどのサービス名は、Cloudflare, Inc.の商標または登録商標です。

この記事を書いた人

野澤 孝理の横顔と上半身

株式会社curve

野澤 孝理

デジタルマーケティングを中心にClaude CodeやCodexを活用したサイト型LP制作、集客ツール設計、解析ツール導入や業務改善システムの構築等の集客×AIを掛け合わせた包括的支援を展開しております。

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