議事録の文字起こし・要約・書式の整理はAIで自動化できます。町田市の約96%削減などの公表事例、5つの手順、プロンプト例、法人研修で教える内容を整理しました。
議事録の作成は、AIで自動化しやすい業務の代表です。東京都町田市は試験導入で議事録の作業時間を約96%削減したと公表しています。録音した会議の音声をAIで文字にし、生成AIで要点・決定事項・宿題の形に整えれば、作業の大半はAIが受け持てます。ただし「録音して終わり」ではなく、最後に人が事実を確かめる工程は残します。この記事では、自動化の手順、自治体や企業が公表している導入事例の数字、ツールの選び方、そして法人研修で何を教えるかを、非エンジニアの方向けに整理します。
議事録作成はAIで自動化できる?
結論から言うと、議事録作成のうち「音声を文字にする」「要点をまとめる」「決まったことと宿題を一覧にする」「社内の書式に整える」の4つは、AIでほぼ自動化できます。一方で、「発言の聞き間違いがないか」「数字や固有名詞が正しいか」「外に出してよい内容か」を判断するのは人の仕事です。
そのため、現実的な目標は「議事録をゼロから書く仕事」を「AIが作った下書きを確認して直す仕事」に変えることです。この置き換えだけでも、作成にかかる時間を大きく減らせる場合が多くあります。後で紹介する自治体の事例でも、最終確認は職員が行ったうえで、作業時間を4分の1程度にしています。
なぜ最初に自動化する業務として議事録が向いているのか
議事録が最初の題材に向いているのは、どの部署にもあり、効果を測りやすく、AIの誤りに気づきやすいからです。それぞれ説明します。
- どの部署にもある:営業会議、定例会、取引先との打ち合わせなど、会議のない部署はほとんどありません。一つの手順を覚えれば、全社に横展開できます。
- 効果を測りやすい:「1回の議事録に何分かかったか」を導入前後で比べるだけで、効果が数字で分かります。
- 間違いに気づきやすい:会議に出ていた人が読めば、AIの聞き間違いや要約の抜けにすぐ気づけます。AIの出力を確認する習慣を身につける練習にもなります。
反対に、契約書の判断や採用の合否のように、誤りが取引先や応募者の権利に直結する業務は、最初の題材には向きません。まずは社内向けの議事録で「AIに任せる部分と人が確かめる部分を分ける」感覚をつかむのが近道です。
AIで議事録を作る5つの手順
- 録音する:Web会議ならツールの録音機能、対面ならボイスレコーダーやスマートフォンで録音します。会議の冒頭で、録音とAIで議事録を作ることを参加者に伝えておきます。
- 文字にする(文字起こし):音声認識のAIで、音声を文字のデータに変えます。Web会議ツールに付いている機能を使う方法と、専用のサービスを使う方法があります。
- AIで要約・整形する:文字起こしと会議資料を生成AIに渡し、「会議名・日時・参加者・決定事項・宿題(担当者と期限)・次回の予定」の形にまとめるよう指示します。社内の過去の議事録を見本として渡すと、書式がそろいます。
- 人が確認する:会議に出ていた人が、数字・固有名詞・決定事項・担当者と期限を中心に確認し、直します。
- 共有して宿題を追いかける:決まった書式で共有し、宿題の一覧はタスク管理の表やツールに移します。議事録は「作ること」より「次の行動につなげること」が目的です。
手順3の指示文は、毎回考えずに済むよう「型」にしておきます。たとえば「次の文字起こしから、決定事項と宿題を表にしてください。担当者と期限が発言から読み取れない項目は『未確定』と書き、推測で埋めないでください」と書いておくと、AIが話をつくってしまうことを防ぎやすくなります。
議事録AIのプロンプト(指示文)の例
研修で最初に配る指示文の型の例です。会社名や書式は、自社に合わせて書き換えてください。
あなたは社内会議の議事録担当です。
次の「文字起こし」と「会議資料」をもとに、議事録を作成してください。
# 出力の形
1. 会議名・日時・参加者
2. 決定事項(箇条書き)
3. 宿題(担当者・内容・期限の表)
4. 次回までに確認が必要なこと
5. 次回の予定
# 守ること
- 文字起こしに無い内容は書かない
- 担当者や期限が読み取れない場合は「未確定」と書く
- 数字と固有名詞は、文字起こしの表記のまま残す
- 聞き取れない部分は[不明]と書くこの型のポイントは、AIに「書かないこと」を指示している点です。生成AIは、空いている欄をそれらしい内容で埋めようとすることがあります。「未確定」「不明」と書かせておけば、人が確認すべき場所がひと目で分かります。
慣れてきたら、過去の議事録を1〜2本「見本」として一緒に渡すと、見出しの付け方や文体が自社の書式に近づきます。浜田市議会も、過去の会議録をAIに読ませてから整形させています。部署ごとに会議の種類が違う場合は、営業会議用、定例会用など、型を2〜3種類に分けておくと使い分けやすくなります。
議事録をAIにするとどのくらい時間が減る?自治体・企業の事例
公表されている事例では、東京都町田市が試験導入で議事録の作業時間を約96%削減し、島根県浜田市議会は会議録の作成時間を約4分の1にしています。パナソニック コネクトは、議事録作成を含むAI活用全体で年間78.8万時間を削減したと発表しています。
組織 | 取り組み | 公表されている効果 |
|---|---|---|
東京都町田市 | 2024年11月に「議事録サポートAI」を導入。録音した音声を文字にし、文章生成AIと連携 | 市の有識者会議の議事録作成(試験導入)で作業時間を約96%削減。導入から1か月で約200時間分(約350回分)の音声を議事録化 |
島根県浜田市議会 | 2025年7月から委員会の会議録づくりで本格運用。音声認識のサービス、無料で使える生成AIのサービス、Wordのマクロを組み合わせ、最後は職員が確認 | 作成時間が約4分の1(2日以上→半日程度) |
パナソニック コネクト | 社内のAIアシスタントを全社で活用。用途が広がった例として、ファイルを使った議事録作成を挙げている | 2025年度、AIの活用全体で78.8万時間を削減(総労働時間の3.4%) |
町田市は、市専用の環境で、入力したデータをAIの学習に使わせない形にしたうえで導入しています。浜田市議会の事例で参考になるのは、AIへの指示を、公文書の書き方と過去の会議録を読み込ませる段階、要点の形に整える段階、文体や表記をそろえる段階の3つに分けている点です。さらに手順をマニュアルにしたことで、どの職員でも会議録を作れるようになったと報告しています。なお、浜田市議会が扱っているのは、公表される委員会の会議録です。社外秘の内容を含む社内会議では、入力データの扱いが明記された法人向けの契約を使うことをおすすめします。
なお、これらの数字はそれぞれの組織の条件で測ったものです。自社で同じ削減率になるとは限らないため、導入前に自社の「1回あたりの作成時間」を測っておくことが大切です。
これらの事例から、導入前に決めておきたい点が3つ読み取れます。1つ目は、データの扱いです。町田市は市専用の環境を用意し、入力データをAIの学習に使わせない形にしています。2つ目は、AIに任せる工程と人が確認する工程の分け方です。浜田市議会は、最後に職員が音声や資料と照らし合わせています。3つ目は、手順の文書化です。浜田市議会は手順をマニュアルにし、特定の人しか作れない状態をなくしています。ツールを入れる前にこの3点を決めておくと、導入後に止まりにくくなります。
議事録AIのツールはどう選ぶ?
議事録AIのツールは、機能の多さではなく「自社の会議の形」と「情報の扱い」で選びます。ツールは大きく3種類に分けられます。
種類 | 向いている会社 | 確認したい点 |
|---|---|---|
Web会議ツールに付いているAI機能 | 会議の多くがTeams・Google Meet・ZoomなどのWeb会議 | 使える契約プラン、日本語の精度、管理者の設定 |
議事録専用のサービス | 対面の会議が多い、話者の聞き分けや用語登録が必要 | データの保存場所、学習への利用の有無、料金体系 |
文字起こし+生成AI(ChatGPT・Claudeなど) | 書式を自社に合わせたい、すでに生成AIを契約している | 法人向けプランか、入力データの扱い、指示文の型があるか |
選ぶ順番は「機能の多さ」ではなく、「自社の会議の形」と「情報の扱い」です。社外の人が参加する会議や、人事・顧客の情報が出る会議を扱うなら、データの保存場所と学習への利用の有無を必ず確認してください。
AIテックベースの運営での使い方
AIテックベースの運営者は、営業の電話の内容をAIで要約し、顧客管理の記録に残す仕組みを自分で組んで使っています。会議の議事録と同じく、AIがまとめた要点を人が確認してから記録する流れです。実際に使って感じるのは、要約そのものより「決まったこと」と「次にやること」を同じ形でそろえて残せる効果の大きさです。書く人によって記録の粒度が違う、という問題がなくなりました。
法人研修では何を教える?
研修では、現状の測定、指示文の型づくり、練習用の会議での試行、確認のチェックリストの練習、研修後の試行決めの5つを行います。半日ほどの研修でも「明日から使える」状態まで持っていきやすい題材です。
- 現状を測る:受講者が最近作った議事録1本について、かかった時間を書き出します。
- 指示文の型をつくる:自社の書式に合わせ、「決定事項」「宿題」「未確定の事項」を分けて出す指示文を一緒に作ります。
- 架空の会議で練習する:社外秘を含まない練習用の会議の文字起こしを使い、AIに議事録を作らせます。
- 確認のチェックリストを使う:数字、固有名詞、担当者、期限、外に出せない情報の5点を確認する練習をします。
- 研修後の試行を決める:どの会議で、誰が、いつまで試すかを決めて終わります。
研修の効果は、受講後に「1回あたりの作成時間」と「直した箇所の数」を比べると測れます。測り方はAI法人研修の効果測定で詳しく解説しています。
導入前に決めておきたい注意点
導入前には、参加者への伝え方、AIに入力してよい会議の範囲、使う契約、確認者と保存場所の4つを決めておきます。
- 録音とAI利用を参加者に伝える:特に社外の人が参加する会議では、事前に伝えて了承を得ておきます。
- 入力してよい会議を決める:人事評価や未公表の経営情報を扱う会議は対象外にするなど、範囲を先に決めます。
- 法人向けの契約を使う:個人のアカウントや無料版で業務の会議を扱わないようにします。
- 確認者と保存場所を決める:誰が確認して、どこに保存するかを決めておかないと、議事録が個人のパソコンに散らばります。
社内ルールの作り方はAIを安全に使うための基本ルールも参考にしてください。
よくある質問
Q. AIの議事録はそのまま使えますか?
A. そのままではなく、人の確認を前提にしてください。聞き間違い、話者の取り違え、話していないことの付け足しが起こることがあります。
Q. 無料のAIで議事録を作ってもよいですか?
A. 業務の会議では、入力したデータの扱いが明記された法人向けの契約をおすすめします。無料版は、入力内容がサービスの改善に使われる設定になっている場合があります。
Q. 対面の会議でも使えますか?
A. 使えます。ボイスレコーダーやスマートフォンで録音し、音声ファイルを文字起こしのサービスに渡します。話者が多い会議は、マイクの位置で精度が変わります。
Q. どのくらい時間が減りますか?
A. 会議の長さや確認の手間で変わります。公表事例では作成時間が4分の1程度になった例がありますが、まず自社の作成時間を測ってから目標を決めるのが確実です。
まとめ:議事録は「AIが下書き、人が確認」で始める
- 議事録の文字起こし・要約・書式の整理は、AIでほぼ自動化できる
- 数字・固有名詞・決定事項の確認は人が行う
- 町田市は有識者会議の議事録作成の試験導入で作業時間を約96%削減、浜田市議会は会議録の作成時間を約4分の1に短縮したと公表している
- ツールは機能の多さより、会議の形と情報の扱いで選ぶ
- 研修では、指示文の型と確認のチェックリストを作り、研修後に試す会議まで決める
議事録は、社員がAIの出力を確かめる習慣を身につけるのにも向いた題材です。社員が実務でAIを使えるようになるまでの進め方は、AI法人研修のページでもご紹介しています。
