自分のサーバーで動かせて、使うほど仕事に馴染んでいくAIエージェントが登場しています。無料で使える「Hermes Agent」の仕組みを紹介します。

使うほど賢くなるAIエージェント「Hermes Agent」とは?無料で使えるオープンソースの実力

AIの研究開発を行うNous Research(ナウス・リサーチ)が2026年2月ごろに公開した「Hermes Agent(ハーメス・エージェント)」が注目を集めています。ChatGPTのように提供会社のサーバーで動くサービスではなく、自分で用意したサーバーに入れて動かす、少し毛色の違うAIエージェントです。

開発者向けの共有サイトGitHubでは、「応援の数」を示すスターが2026年9月時点で約25万件に達し、エンジニアを中心に急速に支持を広げています。本記事では、Hermes Agentの仕組みと特徴、クラウド型のAIサービスとの違い、中小企業が導入を考えるときの判断の材料と注意点を整理します。

1. Hermes Agentとは:自分のサーバーで動くAIエージェント

Hermes Agentは、利用者が自分で用意したサーバー(自社のサーバーや、借りたクラウド上のサーバー)に入れて動かすAIエージェントです。仕組みの中身(ソースコード)が公開された「オープンソース」のソフトで、自由度の高いMITライセンスで配布されています。企業が業務に組み込んで使うことも認められています。

「AIエージェント」という言葉はここ1〜2年で急速に広まりましたが、Hermes Agentは、その中でも「自分たちの管理下で動かす」という選択肢を代表する存在として取り上げられることが増えています。

2. 「使うほど自分の仕事に馴染む」仕組み

Hermes Agentの最大の特徴は、使うほど賢くなることを狙った「学習の輪」が最初から組み込まれている点です。

  • スキルとして覚える:うまくこなせた作業のやり方を、再利用できる「スキル」として自分で保存し、使いながら改善する
  • 記憶を持つ:以前伝えた好みや進行中の案件を記憶し、次のやり取りに生かす
  • 過去の会話を探す:必要に応じて自分で過去のやり取りを検索し、今の作業に生かす
  • 利用者を理解する:利用者の好みや人物像を、使うほど詳しく把握していく

指示は、ふだん使っているチャットアプリから出せます。Telegram、Discord、Slack、WhatsApp、Signal、メールのほか、日本で広く使われているLINEやMicrosoft Teamsなど、25を超えるアプリとつなげられ、パソコンの画面(ターミナル)から直接使うこともできます。ただしLINEとつなぐには、LINEの開発者向けサイト(LINE Developers)で公式アカウント用の設定を作り、外部からメッセージを受け取れる窓口(HTTPSのURL)を用意する必要があります。Slackなどに比べると準備の手間は多めです。

決まった時間に自動で作業を実行する予約の機能もあり、「毎朝、前日の問い合わせをまとめて送って」といった定型業務を任せることもできます。

自分で動かすタイプのAIエージェントはHermes Agent以前にもあり、先に広まったOpenClawなどにも記憶やスキルの仕組みはあります。その中でNous Researchは、「経験からスキルを作り、使いながら改善する学習の輪を最初から備えている」点を最大の違いとして打ち出しています。

3. ChatGPTのようなサービスと何が違うのか

大きな違いは、AIの「頭脳」と「保管場所」が分かれている点です。Hermes Agent自体はAIのモデルを持たず、OpenAIをはじめとする各社のモデルを選んでつなぎます。複数のAIモデルをまとめて扱う仲介サービス(OpenRouterなど)や、Nous Research自身のサービス(Nous Portal)を通せば、数百種類のモデルから選べます。Ollamaなど、自社のサーバーの中で動かすモデルにつなぐこともできます。

チャットアプリから指示を出すと、自社のサーバーで動くHermes Agentが記憶やスキルを手元に保存しながら、外部のAIモデルを頭脳として呼び出す仕組みの図

比較項目

ChatGPTなどのクラウド型

Hermes Agent(自前運用型)

AIの頭脳

提供会社のモデル

好きな会社のモデルを選んでつなぐ

記憶や履歴の保管場所

提供会社のサーバー

自分で用意したサーバー

始めやすさ

アカウントを作ればすぐ使える

サーバーの準備と設定が必要

運用・更新

提供会社が行う

自分たちで行う

乗り換えやすさ

サービスに依存しやすい

モデルを替えやすい

「AIも保管場所も相手にお任せ」なのがクラウド型、「AIの頭脳だけ借りて、保管場所は自前で持つ」のがHermes Agent、とイメージすると分かりやすいでしょう。ただし、クラウドのAIモデルを頭脳に使う場合、AIに処理させる内容はそのモデルの提供会社に送られます。「すべてのデータが外に出ない」わけではない点は、正しく理解しておく必要があります。自社のサーバーで動かすモデルにつなげば外には出ませんが、十分な性能を出すには高性能なサーバーが必要になり、費用も手間も大きく増えます。

4. 無料で使える理由と、実際にかかる費用

Hermes Agent自体はオープンソースで、無料です。かかる費用は、主に次の2つです。

  • サーバーの費用:動かすためのサーバー代。自社のパソコンや、安価なクラウドのサーバーでも動かせる
  • AIの利用料:つないだAIモデルの提供会社に、使った量に応じて支払う料金

サーバーについて公式は、月5ドル程度の小型のクラウドサーバーでも動かせると説明しています。見落としやすいのはAIの利用料のほうです。AIエージェントは1つの依頼をこなすために、調べる、考える、確かめる、とAIを何度も呼び出すため、チャットで1回質問するよりも利用料がかさみがちです。料金の安いモデルは費用を抑えられる一方、込み入った作業では失敗が増えることもあります。Hermes Agent本体には利用料の上限を決める機能がないため(2026年9月時点)、上限は仲介サービスや各社の管理画面で設定しておき、実際の費用を見ながらモデルを選ぶと安心です。使った量は、Hermes Agentの画面からも後で確認できます。

モデルを自由に選び替えられるため、あるAIの値上げや仕様変更があっても、別のモデルに切り替えて対応しやすい点はメリットです。特定のAIサービスだけに業務が依存する状態を避けたい企業からも関心を集めています。AIの性能と価格が数か月単位で入れ替わる状況では、この「乗り換えやすさ」はさらに重視されていくと考えられます。

5. 具体的にどんな作業を任せられるか

活用例としては、毎日届く問い合わせメールへの返信の下書き、社内チャットでの質問への回答、決まった形式の資料の整理や、忘れがちな作業の通知などが挙げられています。

特徴的なのは、同じような問い合わせが繰り返し来る場合に、一度作った回答の型をスキルとして覚え、次からは素早く対応できるようになる点です。新人スタッフが仕事を覚えていく過程にたとえられます。ただし、これは設計上の狙いであり、実際の精度は業務の複雑さや、つなぐAIモデルの性能に左右されます。自動で覚えたスキルが正しいとは限らないため、特に顧客対応など社外に影響する業務では、一定期間は人が確認する体制を挟むのが安全です。

最初に「AIが下書きを作り、人が最終確認する」という役割分担を決めておき、慣れるにつれて任せる範囲を少しずつ広げていくと、導入初期のトラブルを減らせます。覚えたスキルは後から見直せるので、定期的に中身を確認し、古くなったやり方や誤ったやり方を消していく運用も大切です。

6. 中小企業にとってのメリットとハードル

メリットは、外部サービスの値上げや仕様変更に振り回されにくいことと、記憶や履歴を自社の管理下に置けることです。顧客情報を扱う業務では、この「手元に残る」性質が評価されています。

ハードルもはっきりしています。サーバーの準備、初期設定、セキュリティ対策、障害が起きたときの対応など、ITに強い担当者がいない会社には負担の大きい作業が続きます。また、開発が活発な分、短い期間で仕様が変わることもあります。バージョンアップで設定の方法が変わることもあるため、変更内容を確認できる担当者を決めておくと安心です。「無料」という言葉だけで飛びつくと、運用の手間に苦労することになりかねません。

7. セキュリティ面で気をつけたいこと

自分で動かすということは、管理も自社の責任になるということです。

  • サーバーの守り:不正なアクセスへの対策を自分たちで行う。記憶に顧客情報や社外秘が含まれる場合、管理が甘いと情報漏洩に直結する
  • AIに渡すデータの範囲:クラウドのモデルを使う場合、処理させる内容はモデルの提供会社に送られる。何を渡してよいかを決めておく
  • 更新は自分で:弱点が見つかって修正版が出ても、自社のサーバーに適用するのは自分たちの役目。クラウド型のように自動では最新にならない
  • つなぐチャットの管理:誰がどのチャットから指示を出せるかを限定し、関係のない人が操作できないようにする

8. 導入するかどうかの判断と、現実的な進め方

次の問いに答えると、自社に向いているかが見えてきます。

問い

「はい」が多いほど

サーバーを扱える人が社内か、頼める外部にいるか

自前運用型を検討できる

顧客情報など、記憶や履歴を手元に置きたい業務があるか

自前運用型の価値が大きい

同じ種類の作業が繰り返し発生するか

「覚える」仕組みの効果が出やすい

すぐに使い始めたい、手間をかけたくないか

まずはクラウド型が向いている

別の見方として、「秘密にしたい情報を扱うか」「同じ作業を繰り返し行うか」の2つの軸で考えると、どちらのタイプが向いているかを判断しやすくなります。士業や医療、金融など、機密情報を扱う機会が多い業種ほど、自前運用型が選択肢に上がりやすいでしょう。ただし前述のとおり、クラウドのモデルを使えば処理させる内容は外部に送られるため、扱う情報によっては、データを学習に使わない契約や、送信先の地域の条件まで確認が必要です。

検討する場合は、①サーバーの設置と初期設定だけを外部の専門家に頼む、②失敗しても影響の小さい社内向けの作業1つで試す、③数週間使ってサーバー代とAIの利用料を記録し、効果と費用を見比べる、の順に進めるのが現実的です。すべてを1つのツールでまかなう必要はなく、日常の文章作成はクラウド型、手元に置きたい定型業務は自前運用型、という使い分けも有力な選択肢です。

9. まとめ

  • Hermes Agentは、Nous Researchが2026年2月ごろに公開した、自分のサーバーで動かすオープンソースのAIエージェント(MITライセンス)
  • スキルとして覚える、記憶を持つ、過去の会話を探す、利用者を理解する、という「学習の輪」で、使うほど仕事に馴染むことを狙っている
  • LINE、Slack、Telegram、Discord、メールなど25以上のアプリから指示できる(LINEは準備の手間が多め)
  • AIの頭脳は各社のモデルを選んでつなぐ。記憶は手元に置けるが、クラウドのモデルを使えば処理させる内容は提供会社に送られる
  • 本体は無料だが、サーバーの準備・更新・セキュリティは自社の責任。小さく試して効果と費用を見比べる

この記事を書いた人

野澤 孝理の横顔と上半身

株式会社curve

野澤 孝理

デジタルマーケティングを中心にClaude CodeやCodexを活用したサイト型LP制作、集客ツール設計、解析ツール導入や業務改善システムの構築等の集客×AIを掛け合わせた包括的支援を展開しております。

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