OpenAIがChatGPTとCodexを統合し、仕事を任せる新モード「ChatGPT Work」を発表。GoogleのSparkやClaudeとの違いも交え、非エンジニアの業務がどう変わるかを読み解きます。
2026年7月9日、OpenAIは、それまで別々のアプリだったChatGPTと、開発者向けのCodex(コーデックス)を1つのデスクトップアプリにまとめ、仕事を任せるための新機能「ChatGPT Work」を発表しました。発表時の搭載モデルは「GPT-5.6」の系列で、9月22日からは新しい「GPT-6 Sol」「GPT-6 Luna」も使えるようになっています。
本記事では、この変化が非エンジニアの働き方にどう関わるのかを、実際に何が変わったのかを整理しながら見ていきます。同じ時期に日本で使えるようになったGoogleの「Gemini Spark」との違いや、安全に使うための注意点もあわせて紹介します。
1. 1つのアプリに「会話・仕事・コード」がまとまった
新しいデスクトップアプリでは、画面を切り替えるだけで「Chat(会話)」「Work(実務)」「Codex(コード)」の3つのモードを使い分けられます。これまでは「文章の相談はChatGPT、コードの修正はCodex」と別々のアプリを使い分けていた会社も、1つのアプリの中で完結するようになりました。
アプリはMacとWindowsの両方で提供され、3つのモードは無料プランを含むすべてのプランで利用できるとされています。エンジニアがいない会社でも、簡単な社内ツールの改修のように、コードが必要な場面で同じアプリを使えるのは便利です。
2. 「ChatGPT Work」は実務を任せるための仕組み
目玉の「ChatGPT Work」は、複数のアプリやファイルをまたいで作業を自分で進める、エージェント型の機能です。指示を出すと、必要な情報を自分で集め、表計算のファイルやスライド、簡単なウェブアプリといった成果物まで作り上げます。数時間にわたって一つの仕事に取り組み続けることも想定されており、Slack、Microsoft Teams、Googleドライブ、SharePointなど、職場のツールと連携する設計です。
これまでのChatGPTは、「メールの内容をコピーして貼り付けてください」と、人が情報を集めてAIに渡す前提のやり取りが中心でした。ChatGPT Workでは、接続済みのツールからAI自身が情報を探しに行き、最終的な成果物まで作って提示します。たとえば「先週の問い合わせメールを分類して、対応が必要なものだけ一覧にして」といった、複数の手順を含む依頼を丸ごと任せられるのが大きな変化です。人の役割は、「依頼の内容を明確に伝える」ことと「出てきた成果物を確認する」ことに変わっていきます。
3. 9月の更新:GPT-6 Sol・Lunaで何が変わったか
2026年9月22日、OpenAIは新しいモデル「GPT-6 Sol」と「GPT-6 Luna」を発表し、同じ日からChatGPT WorkとCodexで使えるようにしました。
比較項目 | GPT-6 Sol | GPT-6 Luna |
|---|---|---|
位置づけ | 複雑なコーディングや、複数の手順を任せる作業向け | 用途を絞った大量の処理向けの、速くて安いモデル |
使えるプラン(ChatGPT Work・Codex) | Plus・Pro・Business・Enterprise・Edu | 上記に加え、無料プランとGoプランもデスクトップアプリで利用可 |
OpenAIによれば、GPT-6 Solは前の世代のGPT-5.6 Solに比べて、事実の誤りがおよそ半分に減り、コーディングで自分の作業を偽って報告することも減っています。任せた作業の手直しが減れば、「実務を任せる」という使い方の実用性はさらに高まります。ただし数値は発表元によるものなので、自社の業務で数件試し、出来栄えを比べるのが確実です。
4. GoogleのGemini Sparkとは何が違うか
同じ時期、Googleも24時間働き続ける自律型のAIエージェント「Gemini Spark」を、日本で使えるようにしました。パソコンを閉じてもクラウド上で作業を続けられる点が特徴です。
比較項目 | ChatGPT Work | Gemini Spark |
|---|---|---|
提供元 | OpenAI | |
ツールとの関係 | 接続の許可を出して、Slack、Teams、Googleドライブなどに中立につなぐ | GmailやカレンダーなどGoogleのサービスと最初から一体 |
会社のアカウント | BusinessやEnterpriseなど法人向けの契約がある | 2026年10月時点で個人のGoogleアカウント専用。会社のGoogle Workspaceでは使えない(法人向けのGemini EnterpriseアプリとWorkspace向けにも提供予定と発表されているが、開始時期は導入時点の公式資料で確認) |
使えるプラン | モード自体は無料プランから。本格的な利用には有料プランが現実的 | Google AI Ultra(月額14,500円以上)から始まり、7月29日の発表以降、Google AI Pro(月額2,900円)にも順次拡大 |
Gmailやカレンダーから見れば、Sparkは自社のサービスという「家主」、ChatGPTやClaudeは許可をもらって出入りする「訪問者」のような関係です。社内の業務がGoogleのサービスでほぼ完結しているならSparkが自然に見えますが、会社のアカウント(Workspace)で使えない点は、業務で使う場合の大きな制約です。複数の会社のツールをまたいで使っているなら、コネクタで中立に接続できるChatGPTやClaudeのほうが向いています。
5. 向いている仕事、向いていない仕事
「仕事を任せられる」といっても、どんな仕事でもうまくいくわけではありません。向き不向きを知っておくと、最初の一歩で失敗しにくくなります。
向いている仕事 | 向いていない仕事 |
|---|---|
手順がある程度決まっていて、材料が接続したツールの中にそろっている仕事(例:問い合わせの分類、議事録からの要点の抜き出し、表の作成) | 判断の基準が人によって違い、言葉にしにくい仕事(例:取引先ごとの微妙な価格交渉) |
出来上がりを人がすぐに確認できる仕事(例:資料の下書き、一覧表) | 間違えたときに取り返しがつかない仕事(例:送金、契約の締結、顧客への一斉送信) |
同じ形で繰り返し発生する仕事(例:毎週のレポートの集計) | 材料が紙や頭の中にしかない仕事 |
なお、同じ「仕事を任せるAI」は他社からも出ています。Anthropicも、Claudeのアプリ(デスクトップ版のほか、ウェブ版やスマートフォン版にも拡大中)で作業を任せる「Claude Cowork」を提供しており、コネクタで外部のツールとつなぐ考え方は共通しています。どれを選ぶにしても、「任せる仕事の切り出し方」と「確認の仕組み」が成果を左右する点は変わりません。
6. 使う前に確認したいこと
- 社外に出るものは人が確認する:エージェントが作った文面を、そのまま送信する運用は避ける
- 機密情報の扱いを決める:顧客の個人情報や契約書をAIに読み込ませる場合、利用規約と社内ルールでどこまで許すかを先に決める。法人向けのプランでは、入力した内容が学習に使われない設定が標準になっていることが多い
- 権限を絞る:「メールは下書きまで、送信はしない」「特定のフォルダ以外は触らせない」といった線引きを最初に決める。どの操作の前に人の承認を求めるかも設定しておく
- いきなり全社導入しない:議事録の整理や、問い合わせメールの仕分けなど、社内向けの定型作業から始める
7. よくある誤解
「無料プランでも、実務を丸ごと任せられる」:無料プランには、利用回数や一度に処理できる量の上限があるのが一般的です。数時間にわたって自律的に動く機能は多くの計算資源を使うため、業務で本格的に使うなら、有料プラン(Plus・Business・Enterpriseなど)がほぼ前提になると考えておくほうが現実的です。
「Codexが入ったから、非エンジニアもコードを書ける」:言葉で指示を出せるとはいえ、作られたコードを自社のシステムに安全に組み込めるかの判断には、技術的な目利きが必要です。特に、外部からアクセスされるウェブサイトや、顧客データを扱うシステムに、AIが作ったコードをそのまま反映するのは避けましょう。社内に詳しい人がいなければ、最終確認だけを外部の制作会社に頼むのも一つの方法です。
8. 中小企業がまず試すならこの順番
- 社内向けの情報整理:会議の議事録をまとめる、複数のファイルから必要な情報を抜き出す(機密性の低い資料から)
- 人が確認する前提の下書き:見積書のたたき台、メールの返信案
- 実際のツールとつないだ自動処理:SlackやGoogleドライブと接続して、定型の作業を任せる
最初に触る担当者を1〜2人に絞るのも効果的です。全員がばらばらに使い始めると、うまくいった使い方も、危なかった使い方も共有されずに終わります。少人数で試し、「この業務には使えた」「ここは危なかった」を言葉にしてから広げたほうが、結果的に導入は速くなります。
OpenAI、Google、Anthropicの3社が同じ方向の機能を競うことで、エージェント機能を含む月額プランの見直しも起きやすくなっています。すぐに乗り換える必要はありませんが、契約更新の時期に、他社の同等のプランと比べてみる価値は高まっています。
9. まとめ
- ChatGPTとCodexが1つのデスクトップアプリになり、実務を任せる「ChatGPT Work」が登場した(2026年7月9日発表)
- 9月22日から、事実の誤りがおよそ半分に減ったとされるGPT-6 Solと、軽量なLunaがChatGPT WorkとCodexで使える
- Gemini SparkはGoogleのサービスと一体だが、2026年10月時点で会社のWorkspaceアカウントでは使えない
- 本格利用は有料プランが現実的。社外に出るものは人が確認し、権限は最小限から始める
- 大切なのは「どのAIが一番賢いか」より、「自社のツールとの相性」と「成果物を確認する仕組み」
