AI法人研修で人材開発支援助成金を検討する企業へ。令和8年度の主なコース、生成AI研修で対象外になりやすい内容、計画届の提出期限、経費の全額負担など申請前の注意点を厚生労働省の資料で整理します。

AI法人研修に助成金は使える?確認すべき制度と申請前の注意点

AI法人研修で助成金の活用を検討する場合、研修を申し込む前に制度の対象と手続きを確認することが大切です。AI研修なら自動的に対象になるわけではありません。ここでは厚生労働省の人材開発支援助成金を入口に、確認する順番を整理します。制度は改正されるため、申請時点の公式資料と管轄の労働局で必ず確認してください。

この記事の制度内容は、2026年10月時点で厚生労働省が公開している令和8年度版の資料(令和8年8月3日版のパンフレット等)をもとにしています。令和8年度は4月、5月、8月と改正が続いており、特に生成AI研修に関係する「対象とならない訓練」の考え方が8月に変わっています。

制度名より先に、自社の訓練目的を確認する

助成金の対象になるかは、「AI」という研修の名前ではなく、受講者の職務と訓練内容の結び付きで決まります。人材開発支援助成金は、事業主等が雇用する労働者に、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させる職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。

まず「どの社員が、どの職務のために、何を学ぶか」を具体化します。単なる製品紹介や個人の趣味としての学習ではなく、業務との関係を説明できる計画にします。

あわせて、制度を使う前提条件も確認します。厚生労働省のパンフレットでは、主に次の点が挙げられています。

  • 申請する会社が雇用保険の適用事業所であること
  • 受講する社員が、その事業所の雇用保険の被保険者であること
  • 研修や人事の担当課長などを「職業能力開発推進者」に選んでいること
  • 「事業内職業能力開発計画」を作り、社員に周知していること

職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定は、計画届を出す日までに済ませればよいとされています。まだの場合は、研修の検討と並行して準備します。

候補になるコースと最新の要件を確認する

AI研修で候補になりやすいのは、人材育成支援コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースの三つです。対象者、訓練時間、実施方法、経費の範囲はコースと時期によって異なります。特定の研修がどのコースに該当するかは、実施前に公式資料で確認してください。

コース

主な対象

AI研修との関係

人材育成支援コース

職務に関連した10時間以上の訓練(OFF-JT)など

業務で使うための一般的な研修の受け皿

人への投資促進コース

高度デジタル人材の訓練、定額制(サブスクリプション型)の研修サービス、社員の自発的な訓練など

定額制のeラーニングや高度なデジタル人材の育成

事業展開等リスキリング支援コース

新規事業などの事業展開、DX(デジタルトランスフォーメーション)化・GX(グリーントランスフォーメーション)化に伴い新たに必要となる知識・技能の訓練

業務のデジタル化に伴う生成AIの研修など

助成の水準も大きく異なります。令和8年8月3日版のパンフレットでは、中小企業の場合、人材育成支援コースの人材育成訓練は経費助成率45%(正規雇用の社員の場合。賃金要件等を満たすと60%)、事業展開等リスキリング支援コースは経費助成率75%です。ただし、1人1訓練あたりの経費助成には限度額があり、訓練時間やeラーニングかどうかで変わります。例えば事業展開等リスキリング支援コースのeラーニングと通信制の訓練は、令和8年4月8日の改正で中小企業15万円、大企業10万円が上限になりました。

また、人への投資促進コースと事業展開等リスキリング支援コースは、令和4年度から令和8年度までの期間限定の制度と案内されています。令和9年度以降も同じ内容で使えるかは、今後の厚生労働省の発表で確認が必要です。

過去のブログ記事にある助成率や上限額を、そのまま今年の計画に当てはめないようにします。厚生労働省の現行パンフレット、支給要領、申請書類をセットで見ます。

生成AI研修で対象外になりやすい内容

汎用的なプロンプトの作り方だけを学ぶ研修は、事業展開等リスキリング支援コースでは助成対象外とされています。令和8年8月3日以降に提出された計画届から、DX化・GX化に関する訓練のうち、職務に間接的に必要な知識や、職種を問わず共通して必要な知識を学ぶものは対象外になりました。

厚生労働省の案内では、次のような例が示されています。

  • 助成対象の例:営業担当者が、生成AIを使って商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ訓練
  • 助成対象外の例:特定の業務への当てはめがない、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練
  • 助成対象外の例:DXの概念やデジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ訓練
事業展開等リスキリング支援コースで、職務に直結した生成AI研修は対象になり得て、汎用的なプロンプトの作り方やDXの概要だけの訓練は対象外になることを比べた図

つまり、全社員向けの「生成AI入門」のような内容は対象外になる可能性が高く、職種ごとの業務に直結した演習を組み込んだ研修であれば対象になり得る、という整理です。研修の内容を受講者の職務に合わせて作ることは、助成金のためだけでなく研修後の定着にも役立ちます。

同じ改正で、事業展開等リスキリング支援コースのeラーニングによる訓練は、1人の社員につき1年度1回までに制限されました(経過措置あり)。eラーニングを中心にした研修を複数回受けさせる計画は、事前に回数の数え方を確認してください。

申請の順序を間違えない

計画届は、原則として訓練開始日の6か月前から1か月前までに管轄の労働局へ提出します。研修の契約や開始後に気付いても、必要な手続きに間に合わない場合があります。日程を先に固定する前に、管轄の労働局へ申請手順と提出期限を確認します。

主な流れは次のとおりです。

  1. 職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定・周知
  2. 職業訓練実施計画届などを作成し、訓練開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ提出
  3. 計画に沿って訓練を実施し、支給申請までに訓練経費を全額支払う
  4. 訓練終了日の翌日から2か月以内に支給申請
  5. 労働局の審査を経て、支給または不支給が決定
推進者の選任と計画策定、訓練開始日の6か月前から1か月前までの計画届提出、訓練実施と経費の全額支払い、訓練終了日の翌日から2か月以内の支給申請、審査と決定の流れ

定額制の研修サービスの場合は、原則として契約期間の初日から1か月前までが期限になるなど、実施形式によって扱いが変わります。また、計画届を出したことで支給が確定するわけではなく、審査は支給申請の後にまとめて行われます。

オンライン、対面、定額制サービスなど、実施形式に応じた取扱いも異なる場合があります。受講記録や出席管理の方法を、研修会社と事前にすり合わせます。

経費と支払いの証拠を残す

助成金を受けるには、会社が訓練経費を全額負担していることが必須です。見積書・契約書・請求書・支払記録で、何の訓練にいくら支払ったか分かるようにします。教材費やツール利用料が対象になるかは条件で変わるため、対象経費を推測しないことが大切です。

研修会社から助成金の利用を提案されても、支給を保証するものではありません。申請主体、書類作成の役割、対象外になった場合の費用負担を確認します。

特に注意したいのが「実質無料」をうたう勧誘です。厚生労働省は、訓練機関からの返金、キャッシュバック、宣伝協力の謝礼、製品の無料提供などを受けると、全額負担していないとみなされ助成金は受けられないと注意を呼びかけています。不正受給と判断されると、会社名と代表者名の公表、不正受給額の全額返還に加えてその2割相当額と延滞金の支払い、5年間の雇用関係助成金の不支給といった重い処分の対象になります。

また、代表者の親族や親会社・子会社など、申請する会社と密接な関係にある相手との間の講師謝金や受講料は、経費助成の対象外です。

社内で先に用意したい資料

受講者の雇用形態と職務、訓練の目的、カリキュラム、実施日程、講師・研修機関、見積もりを整理します。制度上必要な書類はコースごとに異なるため、公式のチェックリストを使います。

申請書類の様式は、計画届を提出した日によって使う版が分かれています。厚生労働省の「申請書類一覧」ページでは、令和8年8月3日以降に計画届を出す場合の様式が別に掲載されているため、古い様式を使わないよう注意します。

助成金の有無だけで研修を決めず、自社の業務に役立つか、研修後に試せるかも判断しましょう。制度が使えない場合でも価値がある内容かを確認することが、投資判断の基本です。研修費用の考え方はAI法人研修の費用はどう決まる?で整理しています。

業務に当てはめた例

例えば営業部門の業務変更に合わせてAI研修を検討するなら、受講者の職務と学ぶ技能、研修期間、講師、費用を先に整理します。そのうえで、希望するコースの現行要件を公式資料で調べ、管轄の労働局に計画届の時期や必要書類を確認します。助成を前提に契約を急ぐのではなく、制度を使えない場合の予算も社内で確かめておきます。

この場合、研修の内容は「営業担当者が生成AIで提案書の構成案を作り、自社の商品情報に合わせて修正する」のように、職務への当てはめが分かる形でカリキュラムに書きます。研修開始を2か月後に設定すれば、計画届の準備と提出に1か月程度の余裕を持てます。

確認チェックリスト

  • 訓練が受講者の職務に関連するか
  • 対象になる雇用形態か(雇用保険の被保険者か)
  • 職業能力開発推進者と事業内職業能力開発計画を用意したか
  • 希望コースの現行要件を確認したか
  • 汎用的な内容だけの研修になっていないか
  • 計画届など訓練開始前の手続きを確認したか
  • 経費を会社が全額負担し、支払いを証明できるか

よくある質問

AI研修なら必ず助成されますか?

いいえ。職務との関連、訓練内容、対象者、手続きなど、コースごとの要件を満たす必要があります。

最新の助成率や期限はどこで確認しますか?

厚生労働省の当該コースの現行資料と申請書類を確認し、最終的には管轄の労働局へ相談してください。古い記事の数値だけで予算を組まないことが大切です。

生成AIのプロンプト研修は人材開発支援助成金の対象になりますか?

業務に当てはめない汎用的なプロンプトの作り方だけを学ぶ研修は、事業展開等リスキリング支援コースでは対象外とされています。受講者の職務に直結した演習を含む内容かどうかが判断の分かれ目です。

研修会社に「助成金で実質無料」と言われたら利用してよいですか?

注意が必要です。返金や謝礼などを受け取ると全額負担の要件を満たさず、不正受給になるおそれがあります。判断に迷う場合は、契約前に管轄の労働局へ相談してください。

まとめ

AI法人研修で人材開発支援助成金を使うには、研修の名前ではなく、受講者の職務と訓練内容の結び付きを説明できることが出発点です。令和8年度は改正が続き、汎用的な生成AI研修が対象外になる、eラーニングの上限額や回数が変わるといった変更がありました。計画届は原則として訓練開始日の1か月前までに出す必要があり、経費は会社が全額負担することが必須です。研修会社の説明だけで判断せず、最新のパンフレットと管轄の労働局で確認してから契約しましょう。

参考資料

研修を検討している方は、AI法人研修のご案内もご覧ください。

この記事を書いた人

野澤 孝理の横顔と上半身

株式会社curve

野澤 孝理

デジタルマーケティングを中心にClaude CodeやCodexを活用したサイト型LP制作、集客ツール設計、解析ツール導入や業務改善システムの構築等の集客×AIを掛け合わせた包括的支援を展開しております。

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