機能追加や修正を繰り返すうちにコードは少しずつ「汚れ」ていきます。エンジニアが「リファクタリング」と呼ぶクリーンアップ作業の意味と目的、実際の現場でよく見つかる問題事例をもとにわかりやすく解説します。

コードクリーンアップとは?実際の現場で見つかった7つの問題と原因を解説

コードクリーンアップとは何か

ホームページを公開・運用していく中で、機能追加や修正を繰り返すうちにコードの中に「不要なもの」や「重複したもの」が少しずつ蓄積されていきます。クリーンアップとは、そういった積み重なった汚れを取り除き、コードを整理・整頓する作業のことです。

エンジニアの間では「リファクタリング(Refactoring)」とも呼ばれます。見た目や機能を変えずにコードの内部品質を高めることで、将来の作業をスムーズにするための投資です。ちょうど「家の大掃除」に近いイメージで、住み続けるほど必要になり、定期的に行うことで快適さが保たれます。

クリーンアップの目的

主な目的は「将来の作業をスムーズにすること」です。

コードが散らかった状態だと、次に修正しようとしたときに「どこを触ればいいかわからない」「なぜこうなっているのかわからない」という状況が起きやすくなります。これはエンジニアの世界では「技術的負債(Technical Debt)」と呼ばれており、後回しにするほど解消コストが大きくなります。

特に以下のようなケースでは、コードの可読性が作業効率に直結します。

  • 複数人で開発しているチーム
  • 制作会社から引き継いだサイトを内製で運用している場合
  • 数年後に別の開発者が機能追加する予定がある場合

「今はとりあえず動いているから問題ない」という考え方は短期的には正しいですが、半年・1年後に「どこに何が書いてあるのかわからない」状態になると、修正1つに数倍の時間がかかるようになります。

実際の現場で見つかる問題事例

ここでは実際のサイト制作・運用の現場で見つかった具体的な問題を7つ紹介します。いずれも「動いているから問題ない」と判断されやすく、通常の確認作業では発見されにくいものばかりです。

1. 同じ条件のCSSブロックが2か所に重複していた

原因:段階的な修正の積み重ね

「スマホのヘッダーを広げて」「行間を広げて」など、複数回に分けてCSSを修正したとき、修正のたびに既存のメディアクエリブロックとは別の場所に追記していくことがあります。気づかないうちに同じ条件のブロックが2つになり、片方を修正しても「なぜ反映されないのか」という事態になります。

これはAIによる修正に限らず、人間が手作業で修正する場合にも起きやすいパターンです。同じファイルを長期間にわたって修正し続けるほど、この問題は蓄積していきます。

2. 記事が0件のときに起きるリンクのバグ

原因:エッジケースの見落とし

「記事が必ず1件以上ある」という前提でコードを書いた場合、0件のときの考慮が漏れます。現状は問題がなくても、将来CMSの設定ミスなどで記事が取得できない状況になると、ページが壊れたように見えるバグが発生します。普段は目に見えないため、クリーンアップで初めて発見されるケースです。

3. 使われなくなったクラスが残っていた

原因:実装変更時の削除漏れ

モーダルのフェードイン演出を特定のクラス名で実装しようとした後、別の方法に変更した際に、JavaScriptのコード側でそのクラスを付与する処理が削除されずに残るケースがあります。見た目は問題なく動いているため気づきにくく、「何のためにあるコードなのか」と後から読む人が混乱する原因になります。

4. 定義しても何も変わらないクラスが残っていた

原因:リファクタリング時の削除漏れ

以前は独自のスタイル(別の色やサイズ)を持っていたクラスが、修正の過程で親クラスと同じ値になったにもかかわらず、クラス定義自体が残り続けた状態です。実行しても何も変わらないコードですが、残っていると「これは意味のある設定か、それともバグか」と後から判断できなくなります。

5. 必要以上にDOM要素が複製されていた

原因:過剰な安全マージンの残存

無限スクロールアニメーションを実装する際、記事が2〜3件と少ない場合でも途切れずスクロールし続けるよう、データを複数回複製してHTMLに出力することがあります。当初は必要な複製数を多めに設定していましたが、実際には半分の複製数で十分でした。過剰な安全マージンがそのまま残った形で、ページの読み込みや処理に余分な負荷がかかります。

6. 調整の痕跡が残ったまま整理されていなかった

原因:段階的な修正の積み重ね

デザインの微調整を行った際に、calc(1.375rem + 5px) のようなremとpxが混在した書き方が残ることがあります。これは「とりあえず数ピクセル足して合わせた」という作業の痕跡で、後から見ると意図が読み取れません。単位を統一した書き方に直すことで、次の担当者が迷わなくなります。

7. 使われていない変数の定義が残っていた

原因:将来の拡張想定が不要になった

CSSでは色やフォントを変数として定義して使い回すのが一般的ですが、「将来セリフ体フォントを使うかもしれない」と想定して用意した変数が、実際にはセリフ体を使わずに完成したため、同じ値の変数が2つ残るケースがあります。将来の変更時に片方だけ更新して不整合が生じるリスクがあります。

問題が生まれる根本的な原因

上記の7つの事例を整理すると、問題の原因は大きく5種類に分類できます。

原因の種類

該当する問題

段階的な修正の積み重ね

重複CSS・調整の痕跡

エッジケースの見落とし

0件時のリンクバグ

実装変更時の削除漏れ

未使用クラス・無意味なクラス

過剰な安全マージン

DOM要素の過剰複製

将来の拡張想定が不要になった

重複変数定義

共通しているのは「動いているから問題ない」と判断されやすい点です。機能には影響しないため、通常の確認作業では発見されにくく、定期的なクリーンアップで初めて見つかるものがほとんどです。

クリーンアップのメリットとデメリット

クリーンアップは「やった方がいい」とわかっていても後回しにされがちな作業です。その理由を理解した上で、計画的に取り組むことが重要です。

メリット

  • 次回以降の修正・追加が速くなる
  • バグが起きにくくなる
  • 外部の開発者や引き継ぎ先が読みやすいコードになる
  • ページの読み込みが若干軽くなる場合がある(不要なコードの削減)

デメリット・注意点

  • 見た目や機能に変化がないため、やった成果が目に見えにくい
  • 作業中に誤って動作に影響を与えるリスクがゼロではない
  • 短期的にはコストがかかる(時間・費用)

特に注意したいのが「動作に影響を与えるリスク」です。不要に見えるコードが実は特定の条件下でのみ機能していたり、削除によって想定外の副作用が生じることがあります。クリーンアップ作業の前後には必ず動作確認を行い、Gitなどのバージョン管理ツールで変更履歴を残すことが大切です。

どのタイミングで行うべきか

クリーンアップに決まったタイミングはありませんが、以下のような節目に行うと効果的です。

  • 大きな機能追加・リニューアルが一段落したとき
  • 制作会社や開発者が変わるタイミング
  • サイトの表示速度や動作に違和感を感じ始めたとき
  • 半年〜1年に1回の定期メンテナンスとして

AIを活用したホームページ制作が普及している現在、コードの生成速度は上がった一方で、AIが生成したコードの品質にはばらつきがあります。「動けばいい」という基準でAIに任せ続けると、今回紹介したような技術的負債の蓄積が特に速くなりがちです。定期的なクリーンアップで「AIが作ったコードを人間が管理できる状態に保つ」という視点が、これからのホームページ運用に求められています。